動脈硬化予防改善(in vitro/in vivo)
アテローム性動脈硬化症は、内膜の炎症反応に伴うマクロファージの浸潤と中膜から内膜への平滑筋細胞の遊走および増殖が起因しており、内膜の細胞内外に脂質が蓄積されることで病変が促進するとされています。
そこで、血清中の総コレステロール量の低下、マクロファージおよび平滑筋細胞の遊走と増殖を抑制することによりアテローム性動脈硬化の発生および促進を抑制できると考え、CTP含有コラーゲンを用いて“in vitro”および“in vivo”での検討を行いました。
in vitro
■方法
AoSMC の遊走性および増殖性(PCNA 陽性細胞数)に対する作用を検討する為、孔径8.0μmのMFを有するトランスウェル上室に基本培地に懸濁した1×106 細胞/mL のAoSMC を入れた後、下室に 0~300 μg/mL の CTP あるいは一般のコラーゲンペプチド(CP)を入れ、37℃にてインキュベートしました。AoSMCの増殖性およびPCNA陽性細胞数の変化をSDS-PAGE法と免疫染色法で検討しました。
■結果
CTPは投与48時間後におけるAoSMCの遊走性を強く抑制しましたが、CPは対象群に対して有意に促進しました(図1)。
また、CTPはAosMCの増殖性を明らかに阻害しましたが、CPでは300μg/mL投与後72時間で有意に増殖促進作用を示しました(図2)。
図1.ヒトAoSMCs の遊走に対する影響
図2.ヒトAoSMCs の増殖能に対する影響
in vivo
■方法
生後3ヶ月のKHCウサギへ、CTP含有コラーゲンを90日間経口投与した群と投与していない群について、総コレステロール量、大動脈のプラーク発生率、および、組織所見について比較検討を行いました。
KHCウサギを用いてCTP含有コラーゲンを3ヶ月間経口投与(200mg/g)し、非投与群と共に血中総コレステロール量(TCHO)、大動脈のプラークおよびその繊維化、マクロファージ(Mφ)およびヒト大動脈血管平滑筋細胞(AoSMC)の浸潤を観察しました。
■結果
非投与群の大動脈にはプラークが生じていましたが、CTP含有コラーゲン投与群ではわずかでした(図3)。非投与群のTCHOは殆ど変化ありませんでしたが、投与群は明らかに低下しました(図4)。また、プラークにおけるMφ、AoSMCの浸潤は投与群では非投与群に比較して有意に少なく、特にMφの浸潤・増生に対する抑制効果が示されました(図5)。
図3.KHCウサギにおけるアテローム性動脈硬化プラークの減少効果
図4.血清中総コレステロールに対する効果
図5.アテローム性動脈硬化プラークにおけるマクロファージ数(Mφ)および平滑筋細胞数(SMC)に対する効果
■考察
CTP含有コラーゲンの経口摂取によってアテローム性動脈硬化の発生や進行を抑制できることが強く示唆されました。
引用: | 沼田徳暁ら. "コラーゲン・トリペプチドの動脈硬化に対する抑制効果" 第第66回日本栄養・食糧学会大会(2012). Tang, Lihua, et al. "Effects of oral administration of tripeptides derived from type I collagen (collagen tripeptide) on atherosclerosis development in hypercholesterolemic rabbits." Journal of bioscience and bioengineering 119.5 (2015): 558-563. |